レア・メタル rare metal
存在量が少なかったり、採掘が困難だったり、精製抽出が難しいなど入手困難な希少金属の総称。「産業のビタミン」などと呼ばれる。
日本は、1983年改正の「金属鉱業事業団法」によって、経済安全保障の理由から供給停止等の障害に備えて、平常時の消費量を基準にして、国家備蓄の42日分と民間備蓄の18日分の合計60日分の国内備蓄が石油天然ガス・金属鉱物資源機構によって行われている。
日本が国家備蓄をしているレアメタルはニッケル、クロム、タングステン、モリブデン、コバルト、マンガン、バナジウムの7元素である。レアメタルの産出は、世界的に産出地域が非常に偏っている。そのためレアメタル産出国の治安情勢、レアメタル産出国の国家戦略によって資源の安定的供給の確保が難しい情勢が生まれる可能性がある。また、価格の変動が激しく安定的な供給システムが必要不可欠である。
2007年、経済産業省はこれらのレアメタルのうち、インジウム、ジスプロシウム、タングステンの3元素について、代替材料を産官共同で開発する計画「希少金属代替材料開発プロジェクト」を発足させた。同様に文部科学省も2007年から「元素戦略プロジェクト」を行なっている。
レアメタルの生産は、銅、亜鉛、鉛、アルミニウム、リチウム、モリブデンなどのベースメタルを生産する過程で副次的に生産されるものが多い。ところが日本では、採算性の悪化から国内でベースメタルの産出を行うことは少なくなってきた。例えば、インジウムの生産は日本の豊羽鉱山が世界第1位であった。北海道の豊羽鉱山(とよはこうざん)では、銀、亜鉛、鉛を採掘していたが、副産物としてインジウムが生産されていたためである。ところが、2006年3月、豊羽鉱山の閉山により世界最大のインジウム産出鉱山が突然無くなってしまった。
副産物として産出されるレアメタルとベースメタルの関係は以下のようになる。
ベースメタル⇒レアメタル
銅⇒コバルト、セレン、テルル、タリウム
亜鉛⇒ゲルマニウム、インジウム、タリウム、ビスマス
鉛⇒アンチモン
アルミニウム⇒ガリウム
モリブデン⇒レニウム
日本には黒鉱ベルト(グリーン・タフ)と呼ばれる鉱床ベルトが存在する。伊豆半島から静岡-糸魚川構造線に沿って、さらに新潟から東北地方の日本海側、北海道西部に抜ける地域である。この地帯には、かつて様々な鉱山が存在していたが、その多くは採算性の悪化によりほとんどが閉山している。
銅、亜鉛、鉛が産出する場合は、副産物として多くのレアメタルが抽出される。レアメタルの価格は直近の数年で5倍から10倍くらい上昇している。金銀価格についても同様である。このまま金属価格が上昇し、高止まりした場合、これらの閉山鉱山の多くが採算レベルに乗ってくる可能性もある。すでに伊豆の金山では再採掘の試掘も始まっているようである。
かつて日本は世界有数の金属輸出国であった。江戸時代、明治時代には、金、銀、銅などが日本の輸出を支えていた時代もあったのだ。メタンハイドレートのようなエネルギー資源を含めて、レアメタル、レアアース、都市鉱山など、資源価格が高騰すると日本は資源国家として復活する可能性を秘めているのかもしれない。
レアメタルの産出国とシェア
ニオブ ブラジル 97.7%
タンタル オーストラリア 93.0%
プラチナ 南アフリカ 88.7%
リチウム チリ 73.2%
タングステン 中国 62.1%
マンガン ウクライナ 46.7%
アンチモン 中国 43.9%
バナジウム ロシア 38.5%
モリブデン 中国 38.4%
クロム カザフスタン 35.8%
ニッケル オーストラリア 35.5%
ボロン トルコ 35.3%
レアメタルの用途
ニオブ 鉄鋼添加剤:自動車や石油パイプライン用の高張力鋼、
高耐蝕性ステンレス鋼、タービン用耐熱超合金
タンタル コンデンサー(パソコン、携帯電話)、歯科インプラント接合剤
プラチナ 自動車用排ガス浄化触媒、点火プラグ、排気センサー、
燃料電池触媒、磁性体材料、抗がん剤原料
リチウム 軽量合金、還元剤、結晶化耐熱ガラス、潤滑剤、
抗鬱剤原料、リチウム電池負極
タングステン 反物質生成実験用ターゲット素材、ドリルなどの高速度鋼、
超硬合金、X線遮蔽用の金属、装弾筒付翼安定徹甲弾の弾芯、
真空蒸着による薄膜形成用素材、TIG溶接の非消耗電極素材
プラズマアーク溶接・プラズマ切断の電極材料
マンガン 乾電池陽極、耐磨耗性・耐食性・靭性鋼鉄添加素材
アンチモン 鉛蓄電池電極材料、ハンダ合金材料、
バビットメタルなどの軸受合金、半導体材料への添加物
ポリエステルを製造する際の触媒、ゴム、プラスチックの顔料
繊維、プラスチック、紙を難燃性にするための添加物の原料
バナジウム 製鋼添加剤:バナジウム鋼(高張力鋼、非調質鋼、工具鋼、耐熱鋼)
アルミニウム合金素材、チタン合金素材、超伝導体
触媒;硫酸製造用触媒、酸化触媒、
排ガス処理:脱硝用複合材・触媒
顔料、塗料、セラミックス釉薬、
電子素子:酸化物半導体
レドックスフロ-電池:電力貯蔵用大型電池
蛍光体:小型表示素子
化学気相蒸着法(CVD)用材料
モリブデン ステンレス鋼の添加元素、工業用の潤滑油、エンジンオイルの添加剤
モリブデン銅合金(ハイブリッドカー、ロケットの電子基板)
金属モリブデン:電子管の陽極、液晶パネル製造ライン
クロム ステンレス鋼、メッキ素材
ニッケル ステンレス鋼、硬貨
軟磁性材料:変圧器の鉄心、磁気ヘッド
ニッケル水素蓄電池、ニッケルカドミウム蓄電池の正極
不飽和炭素結合に対する水素付加の不均一系触媒
ボロン ガラスの原料、防腐剤、金属の還元剤、溶接溶剤や研磨剤、火の抑制剤
ホウ酸:目の洗浄剤、うがい薬や鼻スプレーなど口腔衛生のための医薬品
ゴキブリ駆除剤、スピーカーの高・中音域ユニット振動板
半導体素材、原子炉内において中性子の吸収のため制御棒
加圧水型原子炉の余剰反応度制御、放射性物質運搬容器
複雑な化合物の前駆体として利用
インジウム 液晶・プラズマなどフラットパネルディスプレイの電極(透明導電膜)
半導体添加素材、ハンダ材料
レアアース 希土類元素
原子番号57番のランタン(La)から71番のルテチウム(Lu)までのランタノイド
21番のスカンジウムと39番のイットリウム(Y)を加えた計17種類の元素
水素吸蔵合金、二次電池原料、光学ガラス、強力な永久磁石、蛍光体、研磨材などの材料
チベットは世界のレアアース生産の90%を占めている。
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